私たちは普段、音を聞くとすぐに「これはメロディ」「これは不協和音」といったように意味づけをしています。
脳は本来、ばらばらの音の中にもパターンや正解を見つけようとする性質を持っているからです。
ところが、即興の音にしばらく耳を傾けていると、少しずつ聴こえ方が変わってきます。
決まった形を探しても見つからないとき、脳は「正解探し」をやめ、その場で生まれては消えていく音の揺らぎや質感、リズムを、そのまま受け取るようになります。
すると音は「意味のある情報」として分析されるものではなく、空間に広がるエネルギーのように感じられることがあります。
最初は無秩序に思えた音が、次第に心地よい刺激や豊かな表現として響きはじめます。
この感覚は、抽象画を前にして「何が描かれているのか」を探すのではなく、色や動き、その勢いそのものに心を動かされる体験にも似ています。
また、自然の中で風の音や川のせせらぎをぼんやり聴いているときのように、ただ音を感じている状態にも近いかもしれません。
また、即興は「演奏」というよりも、音を通した対話に近い体験かもしれません。頭で考える時間から少し離れて、自分の内側の感覚につながる時間。
音にすることで、言葉にならないものが整理されたり、気持ちが軽くなることがあります。
即興に耳を澄ますということは、その瞬間に生まれる音の動きやエネルギーを、感じ取ることです。
おといろでは、その瞬間に生まれる音との出会いを大切にしています。

